国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

みんぱく世界の旅

ボリビア・アマゾン(3) 『毎日小学生新聞』掲載 2017年2月25日刊行
齋藤晃(国立民族学博物館教授)
インコの羽とヤシの葉で祝う

マチェテーロの踊り。マチェテという刀の模造品を振りながら踊ります

ボリビアにはカトリック教会の信者が多く、クリスマスやイースター、聖母や聖人の祭日が盛大に祝われます。アマゾン川流域も例外ではありません。なかでも、モホスという地域では、かつて精力的に宣教活動が行なわれたため、キリスト教が深く根づいており、一年を通じて数多くの祭礼が催されます。


聖人祭のときのバホンの演奏。通常、男性がペアで演奏します

祭礼は通常、祭日の前夜から始まります。集会所に祭壇が設置され、そこに聖像が安置されます。地元の人びとはその前で一晩中、音楽を演奏し、踊りを踊ります。祭日の朝、聖堂でミサを行い、そのあと、聖像をみこしに乗せ、広場を一周します。昼には集会所で会食し、午後にはさまざまな余興を楽しみます。

祭礼の踊りや音楽には、地域固有の特徴があります。たとえば、マチェテーロという踊り手は、熱帯の森林に生息するインコの羽でできた色あざやかな冠をかぶっています。記録によれば、キリスト教が伝わる以前、戦争におもむく男性がこの冠をかぶったそうです。おそらく、この踊りはもともと戦争の勝利を土着の神々に祈願するためのものだったのでしょう。


聖像を担いで広場を一周する人びと。踊り手は聖像の方に顔を向けながら、後ろ向きに進みます

祭礼ではまた、バホンという巨大な笛が演奏されます。これは、長さと太さが異なる数本の管を束ねたパンパイプと呼ばれる管楽器の一種です。全長は2メートル近くあり、同種の楽器として世界最大級です。熱帯の平原に生い茂るヤシの葉から作られたこの楽器も、地域固有の要素がキリスト教の祭礼に取り込まれた一例です。

 

一口メモ

祭礼の余興には、暴れる牛を乗りこなすロデオや、油を塗った棒をよじ登り、先端につるされた景品を奪い取る競技などがあります。

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