国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

フィリピン南部のゴング音楽―クリンタン

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フィリピン南部のゴング音楽
クリンタン

人々の心を魅了する美しい響き。
フィリピン南部に伝わるその音楽の魅力とは。


2002年11月15日(金) / 開演 19:00~

講 師:寺田吉孝(国立民族学博物館 助教授)
ゲスト:ウソパイ・カダ―
場 所:ヘップファイブ8階
前売1500円 当日1800円 全席自由
お問い合わせ:ヘップホール事務局【 TEL 06-6366-3636 】
主 催:HEP FIVE
企 画:千里文化財団
協 力:国立民族学博物館

 

南フィリピンのゴング音楽
フィリピン南部にはクリンタンと呼ばれるゴング中心の打楽器アンサンブルがあり、現在でもミンダナオ島やスールー諸島に住むイスラーム教徒によって演奏されています。ゴングとその音楽はイスラーム教伝来以前にフィリピンに紹介され、スペイン統治が始まる16世紀にはフィリピン北部や中部でも演奏されていたと考えられています。しかし、スペインは徹底して現地の人々をキリスト教に改宗し、その過程でスペインやメキシコ起源の音楽・舞踊を奨励すると同時に土着の音楽文化を絶滅に追いやりました。その当時演奏されていた音楽は、スペインに最後まで抵抗しつづけた南フィリピンのイスラーム教徒やルソン島山間部の少数民族によってかろうじて現在に伝えられてきたのです。クリンタンは植民地時代を生き延びた音楽伝統の代表格といえます。

クリンタン音楽は結婚式などの人生儀礼において会衆の娯楽のために演奏されます。プロの演奏家は存在せず演奏が行われる場では誰でも参加することができます。クリンタンの演奏は社会的エチケットや慣習にしたがって進行するため、演奏に参加することはそれらを学ぶ機会にもなっています。また未婚の男女が交流する場としても重要です。さらに、地域によっては言語的メッセージを送る手段となったり、霊によって引き起こされた病気を治す儀礼の伴奏音楽としても演奏されています。

イスラーム教を信じる13の民族集団はそれぞれ異なったゴング音楽の伝統をもっていますが、今回はそのなかでミンダナオ島に住むマラナオとマギンダナオが伝承するクリンタン音楽に焦点をあて、南フィリピンにおける人々の生活と音楽の親密な関係を紹介します。講義には特別講師のカダ―氏をはじめ日本で最初のクリンタン音楽グループであるパガナイ・クリンタン・アンサンブルの実演を交えます。

 

講師プロフィール
寺田吉孝(てらだ よしたか)
国立民族学博物館 民族文化研究部助教授
ワシントン大学音楽部博士課程修了、Ph.D.(博士号)取得。
専攻は民族音楽学。とくに南インドの古典音楽、南フィリピンのゴング音楽、北米のアジア系音楽について研究。最近は、北米のフィリピン系や日系といったアジア系住民が、アジア起源の音楽をもとにしながら、自らのアイデンティティ形成と適合するように変化させてきた音楽についての調査研究をおこなっている。

 

Usopay Cadar(ウソパイ・カダ―)
フィリピン、ミンダナオ島出身の民族音楽学者
ワシントン大学音楽部博士課程修了。1970年代より自身その一員であるマラナオの音楽文化を研究調査し、その第一人者となった。国立ミンダナオ大学、ワシントン大学、クイーンズ大学(ベルファースト)、カリフォルニア大学ロサンゼルス校などで教鞭をとるかたわら、1994年にミンダナオ・クリンタン・アンサンブルを結成し、演奏面でも北米におけるクリンタン音楽の紹介・普及に努めている。