国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

オランウータンのいる森―もりのひと

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オランウータンのいる森
もりのひと

森を奪われた「森の人(オランウータン)」。彼らの本当に幸せな姿とは・・・


2003年2月5日(水) / 開演 19:00~

講 師:阿部健一(地域研究企画交流センター助教授)
ゲスト:渡辺聡史(横浜市立よこはま動物園ズーラシア)
場 所:ヘップファイブ8階
前売1500円 当日1800円 全席自由
お問い合わせ:ヘップホール事務局【 TEL 06-6366-3636 】
主 催:HEP FIVE
企 画:千里文化財団
協 力:国立民族学博物館

 

フィオナはメスのオランウータン。推定年齢は7歳。人間と同じくまだまだ子どもですが、ボルネオ島のセピロックで保護されたときには、すでにみなしごでした。フィオナがいたセピロックには、リハビリテーション・センターがあります。孤児となったオランウータンが森に帰る訓練を受ける施設です。小さいときに親とはぐれたオランウータンは、ひとりでは熱帯林のなかで生き抜くことはできません。少しずつ自然に馴れ、森の中で自活する術を学んでゆかなければならないのです。こうした訓練施設は、ボルネオ島とスマトラ島に、セピロックを含めて5ヶ所あるのです。

孤児となるオランウータンの数は、残念ながら減りません。オランウータンの子どもは、法律や国際条約で禁止されているにもかかわらず、高い値で売買されます。愛らしく人によくなれるので、ペットとして不法に飼われたり、密輸入されたりしているのです。こうしたオランウータンの子どもが、次々と見つけ出され、リハビリテーション・センターに保護されているのです。

オランウータンの受難はそれだけではありません。生育場所も奪われています。オランウータンが生活しているのは、樹高50mを超える熱帯多雨林。果樹や若葉を食べながら、木から木へと移り、ほとんど地上に降りることなく暮らしています。オランウータンが生きるためには、広くて立派な熱帯林が必要です。しかし、そのような熱帯林は、この20年間で約80%が失われました。オランウータンにとって、帰るべき森もなくなってきました。

フィオナも、森に帰れず、日本にやってきました。今は横浜の動物園で大切に飼われています。ただ、手首にはまだワナとおもわれる傷あとが残っています。ずいぶんひどい仕打ちを受けたようで、精神的に不安定です。一方、仲間の9歳になるジュリー君は、動物園で生まれ、動物園で育ちました。熱帯林を見たこともありません。

今回は、フィオナとジュリー君の飼育係りを勤めてきた渡辺聡史さんをゲストにお呼びしました。トラウマを負ったフィオナと恋人のいないジュリー君。彼らとどのような接しかたをしているのか、動物園でオランウータンを飼育する際のご苦労についていろいろお聞きしたいと思います。その一方で、彼らの熱帯林の中での本来の生活のことも気にかかります。オランウータンは、マレイ語で「森の人」。森を奪われた「森の人」の将来はどうなるのでしょうか。動物園のオランウータン、熱帯林のなかのオランウータン。オランウータンについて語りながら、人と動物、人と自然の関係について考えてみましょう。

 

講師プロフィール
阿部健一(あべ けんいち)
国立民族学博物館地域研究企画交流センター助教授
熱帯林生態学・地域研究専攻。主に東南アジア、中国の調査・研究に従事。生物学的な関心だけでなくそこに住む人々の生活と地域の経済や社会構造、さらに熱帯林をめぐるグローバルな政治環境についても興味を持っている。

 

渡辺聡史(わたなべ さとし)
横浜市立よこはま動物園ズーラシア 動物園部管理課経営企画係長
1963年東京都生まれ。幼少の頃から小動物や自然に関心を持つ。日本大学農獣医学部畜産学科卒業後、WWFジャパン(世界自然保護基金日本委員会)でのアルバイト、国内の動物園勤務を経て、平成9年横浜市立よこはま動物園ズーラシアの開園前に入社。
当初、オランウータン、ボウシテナガザル等の担当を務め、平成13年4月より現職。