国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

館員の刊行物

災害文化の継承と創造  2016年2月29日刊行
橋本裕之、林勲男 編 臨川書店
【共同研究成果】

出版物情報

主題・内容

災害からの復興過程において地域文化はどのような役割を果たすのか。東日本大震災から5年―「防災文化」に特化しがちであった災害に関わる従来の文化研究の視野を拡張し、「災害文化」に対する新しい視座を提供する。

おすすめのポイント(読者へのメッセージなど)

これまで人類学の分野ではほとんど論じられることのなかった「災害文化」という観点でまとめあげ、災害に対する「手段として役立つ知識」の背景にある地域の文化にまで関心を広げた画期的な内容になっています。

目次

序 ――災害復興における在来知、もしくは災害文化の継承と創造
第1部 災害の人類学・民俗学
林勲男   災害にかかわる在来の知と文化
木村周平  人類学における災害研究 ―これまでとこれから―
川島秀一  津波碑から読む災害観 ―人々は津波をどのように捉えてきたのか―
植田今日子 避難生活下の祭礼とルーティンの創造 ―旧山古志村の避難状況下の闘牛―
第2部 地域の記憶
丹羽朋子  「きりこ」をつくり「きりこ」をおくる ―切り紙に刻まれる、「こわれたふるさと」の再生のかたち―
関礼子   原発事故避難と故郷の行方
三田村敏正 東日本大震災が昆虫類に及ぼした影響 ―津波災害による昆虫の回復力と原発事故により崩れた人と昆虫との関係―
猪瀬浩平  障害者運動の在来知と原子力災害の経験
第3部 生活の再建
松前もゆる 地域社会の連帯と多様性から考える「復興」とその先 ―岩手県宮古市・重茂漁協の挑戦―
柄谷友香・近藤民代 「自主住宅移転再建」その動機と功罪 ―津波被災者のレジリエンスに学ぶ―
政岡伸洋  被災地との関わりからみえてきたもの ―宮城県本吉郡南三陸町戸倉波伝谷での経験から―
小谷竜介  雄勝の神楽師になること ―地域社会と神楽師の関わりからみる芸能と震災復興―
第4部 価値の創造
日髙真吾  文化財等レスキュー事業の意義を考える ―被災文化財から文化財へ―
加藤幸治  脱・文化財レスキュー ―ポスト文化財レスキュー期における文化創造活動の実践―
橋本裕之  支援から協働へ ―民俗芸能を復興する/させる方法―
岡本翔馬  「災害文化」を育むまちづくりを目指して ―桜ライン311の取り組みから―
あとがき
索引/編者・執筆者紹介
【編者・執筆者(五十音順)】
猪瀬浩平(明治学院大学)、植田今日子(東北学院大学)、岡本翔馬(認定NPO法人桜ライン311)、加藤幸治(東北学院大学)、柄谷友香(名城大学)、川島秀一(東北大学)、木村周平(筑波大学)、小谷竜介(東北歴史博物館)、近藤民代(神戸大学)、関 礼子(立教大学)、丹羽朋子(人間文化研究機構)、橋本裕之(追手門学院大学)、林 勲男(国立民族学博物館)、日髙真吾(国立民族学博物館)、政岡伸洋(東北学院大学)、松前もゆる(盛岡大学)、三田村敏正(福島県農業総合センター)