国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

館員の刊行物

Public Culture and Islam in Modern Egypt: Media, Intellectuals and Society (Library of Modern Middle East Studies)  2016年4月25日刊行
相島葉月 著 IB Tauris

出版物情報

  • 出版社:IB Tauris 出版社ホームページはこちら
  • 定価:ハードカバー版 £64.00/Kindle £17.56
  • ISBN:978-1780766218
  • 判型・体裁:14 x 2.5 x 22.2 cm
  • 頁数:204頁

主題・内容

本書はイスラームをエジプトの公共文化の一部として捉え、1960~70年代にラジオ・スターとして活躍したイスラーム思想家、アブドゥルハリーム・マフムードの生涯、著作および公共的イメージについて探求した。

おすすめのポイント(読者へのメッセージなど)

2011年のアラブの春以来、中東の中流層とメディアの役割が注目されているが、人々の生活世界に着目した研究は少ない。本書は「教養人」に憧れるエジプトの都市中流層が、アブドゥルハリーム・マフムードの著作やラジオ講義を利用して格差社会で生き残ろうとする様子を描いた民族誌である。

目次

序章
1.アズハル改革とイスラーム諸学の変容
エジプトの首都カイロにあるイスラーム・スンナ派最高学府のアズハル・モスク。19世紀後半に始まった教育制度の近代化によりイスラーム的知の継承方法が変容した過程を考察した。
2.スーツからアズハル服へ
アブドゥルハリーム・マフムード(1910-78年)の生涯を、幼少期から学生時代、アズハル大学に就職後と区分して紹介した。1940年にフランス留学から帰国した後もマフムードはスーツを着ていたが、1961年にナセル大統領が行ったアズハルの国営化に抗議して、アズハル服(白いターバンと黒いロングコート)に着替えた。
3.スーフィズム(イスラーム神秘主義)市場の開拓
19世紀に広まったイスラーム改革主義の潮流によりスーフィズムは「逸脱した信仰」と位置づけられた。アブドゥルハリーム・マフムードの著作より、中流層をターゲットとした彼のスーフィズム・マーケティング戦略を分析した。
4.公共的イスラームと私的スーフィズム
2008年の断食月ラマダーンにエジプトで放送された、アブドゥルハリーム・マフムードの伝記を扱ったテレビドラマにおけるスーフィズムの表象を手がかりに、エジプト社会におけるスーフィズムのイメージを探求した。
5.ハーディス(預言者ムハンマドの言行録)の語りにおける様式美
イスラームの聖典といえばクルアーンが有名だが、アブドゥルハリーム・マフムードはハディースの朗誦に力を入れていた。エジプト国営放送局に保存されたラジオ講義の録音より、マフムードによるハディースの語りの表現形式を分析した。
6.学者としての正当性とは
没後30年以上経過してもなお再生産され続けているアブドゥルハリーム・マフムードの公共的イメージについて、聞き取り調査のデータを通じて考察した。
結語