国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

樫永真佐夫『ハノイの異邦人』 ─ 6.ベトナムの交通

樫永真佐夫『ハノイの異邦人』

6.ベトナムの交通
写真
 ベトナムの交通事情は非常に悪く、道路も悪いし、交通法規もあってないようなものなので、事故がたえません。一昨年前からかバイクが急増し始めてから、ますますベトナムの交通は無政府状態です。
 バイクの急増は次のような理由です。中国で都市部へのバイク進入が禁止になり、中国でバイクが売れなくなったので、会社としては赤字が出ようがとにかく1台でも在庫を減らさないといけないということになり、ベトナムに輸出して中国がバイクを1台数百ドルという安価で売りました。それでベトナムでバイクが急増しました。それからホンダは起死回生をかけて、下請けの会社に負担をかけること承知で安いバイクを作りました。そうすると、中国製バイクはとたんに売れ行きが悪くなり、今度はホンダが売れまくりました。すると、今度はベトナム政府が中国製バイクを組み立てて売っていた国営企業保護のために、奇妙な部品輸入規制をかけてホンダがたいへんなことになっていますが、それはまた別の話です。ついでにいうと、中国製バイクはみなホンダなんかのバッチモンです。
 とにかくバイクは都市でも郊外でもメチャクチャ増えました。通勤時間のハノイの交通は、あちこちで麻痺しています。事故も日常茶飯事です。人からの又聞きなので正しいかどうかわかりませんが、この半年でベトナムの交通事故死者数は1万人を超えているそうです。大事故の場合でも示談で終わることがこの国では多いので、実際の事故死者数はもっと多いはずです。ハノイで生き残るには、注意力はもちろんですが、悪運に強いことも大事な条件です。いつ、どこで、どんなふうにぶつけられても不思議ではありません。一方通行でも、前後左右に気をつけながら運転しないといけないのです。
 長い前置きになりましたが、友人がベトナム人女性と結婚することになり、結婚式に奥さんの村まで行って来ました。そのとき郊外で見た事故の現場です。写真を注意してください。この事故ちょっと不思議です。すれ違いざまのトラックを見ればおわかりのように、ベトナムは右側通行なのですが、横転しているトラックは、左側の路肩から落っこちているのです。状況の想像にくるしむ事故です。
 
[2002年6月]
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