国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

自然との共生(2) ─ 津波と北斎 ─

異文化を学ぶ

昨年末のインド洋津波は、日本語の「つなみ(TSUNAMI)」を世界にひろめた。「つなみ」の「つ」は外国人には発音しにくいようで、インドで被害の大きかったタミルナードゥ州でも、「スナーミ (Sunami)」と表記されている。ほとんど津波の経験がなかったインドでは、まず「スナーミとはなんぞや」について解説をくわえなければならない。このとき、津波のイメージは、有名な北斎の「神奈川沖浪裏」にもとめられている。

海岸から500メートル以内に家を建てることを禁じたこの州では、津波の本場日本で、防風林、防潮堤などが整っていて、海岸近くまで家が建っていることがどうしても理解しがたいようであった。警報システムの導入も必要だが、こうした知恵を伝えることも重要な援助である。

国立民族学博物館 杉本良男

毎日新聞夕刊(2005年4月20日)に掲載