国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

自然との共生(6) ─ 島が沈む ─

異文化を学ぶ

自然との共生(6) ─ 島が沈む ─

2月16日に京都議定書がようやく発効した。この時を心待ちにしていたのが、南太平洋やインド洋に浮かぶ小島嶼国家である。キリバスやモルディブなど、海抜が数メートルしかないサンゴ島からなる国にとって、地球温暖化がまねく海面上昇は生活の場をうばう深刻な問題である。海面が数メートル上昇すれば島を去るしかない。すでに塩水がタロイモ畑に入り込み、満潮時には海岸道路を波が洗う島もある。

海に沈んだ島は過去にもあった。オセアニアで調査していると、「沖にあった島が沈んだから移住してきた」という伝承に時々であう。しかし現在おこっている海面上昇は、明らかに人間の営みが引き起こした現象である。

グローバル化した地球社会の一員である彼らを、現代の英知がどのように救えるかが問われている。

国立民族学博物館 印東道子

毎日新聞夕刊(2005年5月25日)に掲載