国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

花(3) ─ 削りバナ ─

異文化を学ぶ


単に「ハナ」ともいう。昔は小正月の飾りもののひとつとして、全国各地で作られていた。清楚(せいそ)で美しいそれらの造花は、主にヤナギやヌルデを材料にしていた。樹皮をはいだ木肌のすがすがしさが、神迎えの儀礼にふさわしく思われたのだ。しかし、今は埼玉県・秩父地方や群馬県高崎市とその周辺に伝承されているだけになった。

国や自治体が記録作成と伝承保存の措置を講じ、重要民俗文化財指定も受けている。花弁状を呈した文字通りの造花もあれば、細かくカールした巻き毛のように長く繊細に細工したものもある。削りバナは、形状も作り方も、アイヌの神々である「イナウ」との共通点がきわだっている。みんぱくに来られたら、アイヌ文化と日本文化の展示コーナーで、両者を見くらべていただきたい。

国立民族学博物館 近藤雅樹
毎日新聞夕刊(2007年4月18日)に掲載