国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

海と人(8) ─危険と楽しみ─

異文化を学ぶ


ニュージーランドで育った私は、兄弟とともに小さなヨットを走らせたものだ。そしてほんの短時間の航海でも大変な疲労を感じたことを思い出す。

古代、カヌーの航海士たちは新しい島を求め、広大な太平洋に人々を導いた。数週間にわたりカヌーで航海するには、想像を絶する体力と忍耐力、そして強力なリーダーシップが必要とされたにちがいない。何人が命を落としたことだろう。食料や水をめぐる争いは、荒れた海よりも危険であったはずだ。ストレスが高じたとき、人間の最大の敵は人間自身となりうるからである。

今日、日本ではサーフィンやセーリングなどのスポーツを通して太平洋の航海に思いをはせることができる。安全で楽しい夏を海に祈ろう。

国立民族学博物館 ピーター・マシウス
毎日新聞夕刊(2007年7月25日)に掲載