国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

都市(3) ─南インドの都市の音楽─

異文化を学ぶ


チェンナイのような南インドの大都市では、フュージョンという英語名をもつ音楽がここ数年人気だ。欧米のフュージョン音楽と違い、よく知られたインド古典音楽の曲をアレンジして西洋のポップ音楽と融合し、シンセサイザーや打ち込みの技術を使って作るのがインド流。コンサートはまれで、高級ホテル、ショッピング・モール、こじゃれたレストランなど、近年のインドの都市における急激な変化が最も表れている場所でBGMとして流されている。

神をたたえる歌が多い古典音楽を信仰の形だと考える人たちは、フュージョンを神の冒とく、金もうけ主義と批判した。しかし、作り手はほとんどが古典音楽の出身者。MTV世代の若者に古典を聴いてもらおうと、都市のにおいのするポップな音づくりを続けている。

国立民族学博物館 寺田吉孝
毎日新聞夕刊(2007年10月17日)に掲載