国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

都市(7) ─国で見る都市、人で見る都市─

異文化を学ぶ


メイド・イン・イタリーのスーツ。その多くは現地に住む中国人の手によって生み出されていることをご存じだろうか?

イタリアには、日本のようにゲートで仕切られたチャイナタウンこそないが、ローマの中心部・テルミニ駅近くには、中国南部・温州出身の人が集住している。古びた建物に中国語の看板が並び、公園では華字新聞を読みながら孫の子守りをしている年老いた中国人がいる。温州は、中国の中でも衣服や靴、装飾品などの産地として有名だ。手先の器用さを生かして移住先でも工場で靴や洋服を作っている人が多い。

都市を場所で考えることもできるが、人で見ることもできる。「メイド・イン・イタリー」、でもその奥には「メイド・バイ・チャイニーズ」の姿が隠されている。

国立民族学博物館 陳 天璽
毎日新聞夕刊(2007年11月14日)に掲載