国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

都市(8) ─市章─

異文化を学ぶ


日本で最初に市章を制定したのはどこだろう。早速、何種類かの百科事典と『広辞苑』を見たが、どれにも「市章」の項目がない。インターネットの「県章・市章ダウンロード」では図柄の情報しかなかった。誰か、教えて。

にわか仕込みで恐縮だが、制定が早かったのは金沢・京都(明治24年)と大阪の同27年。盛岡も同39年に吏員用ちょうちんなどの定紋とした。開港場の神戸と横浜は以外に遅く同40年と42年。名古屋も同40年で、当時の市章制定の風潮に追随した格好だ。

今や日本人の大半が「市民」だが、住民登録先の市章を知る人は多くないだろう。訪欧中、市中に市旗が翻り、随所に市章の浮き彫りがある街路の風情から、自治都市時代以来の伝統と、彼我の市民社会への帰属意識の違いを見た。

国立民族学博物館 近藤雅樹
毎日新聞夕刊(2007年11月21日)に掲載