国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

都市(9) ─観光都市ならではの稼ぎ─

異文化を学ぶ


ネパールは首都カトマンズの空港。一歩外に出ると、スーツケースに子どもたちの手が伸びる。盗もうというのではない。荷物運びを手伝って、外国の小銭をもらおうという争奪なのだ。なかには英語で「コインを収集しているので、あなたの国の小銭がほしい」という子までいる。みそは、あなたの国の小銭をとせがむところだ。身構えた観光客も、この子どもらしい要求に心を動かし、邪魔だった10円玉や100円玉をあげる。

100円は現地通貨に換算すると約60ルピー。それは驚くなかれ、石割などの単純労働で得る日当に匹敵する額だ。外国の小銭に目をつけた、したたかな子どもたち。でも、彼らは都市で生き抜くために必死なのだ。どうか裏切られたなどと思わずに、今後もだまされたふりをしてほしい。

国立民族学博物館 南 真木人
毎日新聞夕刊(2007年11月28日)に掲載