国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

中国と世界(2) ─中国とアフリカの近い関係─

異文化を学ぶ


2000年以降、安価な工業製品を求めて中国へ渡るアフリカの商人が急増した。それに続いて中国人商人もアフリカ各地へ商品とともに移動し始めた。今やアフリカの市場は中国製品に圧倒されている。

中国のアフリカへの接近は、経済ばかりではなく、政治や文化の分野においても盛んである。アフリカ諸国の首脳を招いた大集会を開催したり、アフリカの大学に中国語学科を開設したり、中国は国をあげてアフリカに接近している。

くしくも、ギャヴィン・メンジーズという英国海軍の元艦長が著した『中国が新大陸を発見した年』の原語版が刊行されたのが2002年。永楽帝に仕えた宦官(かんがん)の鄭和(ていわ)がコロンブス以前にアメリカ大陸を発見したとする説は、経済成長真っただ中の今日の中国が陸のみならず海を制する大国だったことを世界に広めた。また、鄭和の船団がメッカを経由してアフリカに到達していたことも明らかになった。

600年も昔に、中国はアフリカにラブコールを送っていた。そのことは鄭和がムスリムだったことと無関係ではないだろう。今日のアフリカの商人は、中国語を駆使して平和で活発な経済活動を繰り広げている。イスラームのネットワークを介した活発な人の交流が、かつても遠い大陸をまたいでおこなわれていたのではないだろうか。

国立民族学博物館 三島禎子
毎日新聞夕刊(2007年12月12日)に掲載