国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

中国と世界(7) ─ボツワナの中国人─

異文化を学ぶ


ここ20年、私はアフリカ南部に暮らす先住民の研究のために、ボツワナという国に毎年出かけているが、近年、中国人に会うことが多くなった。

2年前には、首都から1000キロも離れた地方都市で、新たに中国人の経営する食堂がオープンした。この店では中華料理に加えて、トウモロコシの粉を煮込んだ主食に肉をそえたものを好む、現地のニーズにあわせた食事メニューを出しており、アフリカの人たちの心をつかんで現在でもにぎわっている。

中国製品を販売する雑貨店も、もともと首都にはあったが、最近ではどこの地方都市でも見るようになった。わずか1万人のある町で、最近、中国人の総数が100人を超えたという。また、国内で唯一の大学にも中国人の非常勤講師がいる。数年前には、学校などの建設現場で働く中国人の数が増えたことで地元の人々の職が奪われてしまい、国内の新聞で問題になったことがある。しかし、彼らを排斥しようとするところまでにはいたらなかった。

ボツワナは、人口総数がわずか200万の国ではあるが、ダイヤモンドを産することもあって経済的には恵まれている。中国人はわずか数年のあいだに、国内のあらゆる職種に進入してきた。今後、その数はますます増えていくであろう。彼らの勢いは止まらない。

国立民族学博物館 池谷和信
毎日新聞夕刊(2008年1月23日)に掲載