国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

中国は今(1) ─国家級無形文化財になった春節─

異文化を学ぶ


春節は旧暦の正月のことで、今年は2月7日にあたる。年末年始における神々と祖先祭祀(さいし)に由来する、中国で最も重要な祭日だ。2006年に清明節、端午節とともに国家級無形文化財に指定された。

長い歴史の中で、春節の飾りやごちそう、新年あいさつと娯楽は、基本要素として守られてきた。春節の前に吉祥図案の切り紙、赤い紙に書いた「福」、「春聯(しゅんれん)」といった新年への期待を託した縁起の良い対句を玄関や各部屋の入り口に飾る。農家は家畜小屋や穀物の倉庫にも「福」の紙を張る。

春節のごちそうは地域によって異なるが、北は餃子(ギョーザ)、南はお餅を食べるのが基本パターン。年が明けてから、一族の先祖、家族、親類、友人の順に、後輩から先輩へ、下の世代から上の世代へ順に新年あいさつを交わす。子供が親や祖父母にあいさつする場合、「圧年銭(ヤースゥイチェン)」というお年玉がもらえる。

春節の娯楽といえば、獅子舞や竹馬、マージャンなどが有名だ。近年は旅行先で春節を楽しむ人も増えている。多民族共生の中国では、春節は漢族だけでなく、満族や (ドン)族、ペー族、京族、朝鮮族、土家(トゥジャ)族などの少数民族にとっても重要な年中行事である。今年3月13日から国立民族学博物館で開く特別展「深奥的中国―少数民族の暮らしと工芸」では、チワン族農家の春節風景をうかがうことができる。

国立民族学博物館 韓 敏
毎日新聞夕刊(2008年2月6日)に掲載