国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

バブリーなアジア(2) ─台湾大学事情─

異文化を学ぶ

バブリーなアジア(2) ─台湾大学事情─


「野林おじさんの大きな頭がゆれる」「中国語の最後には必ずne~をつけるね」

これは、私が台湾の最高学府といわれる大学で特別授業を行ってしばらくしてから、台湾のあるブログに書かれた内容の一部。書いたのは授業を受けた女子学生らしい。当世学生気質、どこの国でも似たようなもの。この事を台湾の友人に話したところ、「なんでこんな学生がこの大学にいるのだろう」と。

学歴社会の台湾では、大学への進学率が年々あがり、それに呼応するかのように大学の数も増えていった。現在では160校余りの大学が台湾に存在する。一方で、昨年の台湾の出生率は約1.1、新生児は20万人に満たなかった。全入時代の到来どころか、深刻な学生不足への対応がせまられている。当世大学事情もどこの国でも似たようなものだ。

台湾では従来、総合系と技術系2種類の大学のほかに、「技職学院」とよばれる専門学校が存在してきた。 90年代の後半以降、政府は技術者の水準をあげるために専門学校の多くを大学に昇格させた。結果、台湾の大学の約3割は2学部以下の大学である。

そんな状況下、政府は国立大学の法人化を検討している。大学法の修正案には、国立大学法人は自校あるいは数校合同で理事会を組織すると書かれているとか。他人事(ひとごと)とは思えないお隣の様子なのである。

国立民族学博物館 野林厚志
毎日新聞夕刊(2008年6月11日)に掲載