国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

モノめずらしいくらし(3) ─ うちわで汗をかく ─

異文化を学ぶ

あおげばあおぐほど、汗まみれになるのはどんなうちわ? うちわ片手に浴衣というのが日本の夏の夕涼み定番アイテム。ところが、古今東西、うちわもいろいろである。

タイの稲の刈りいれどきに登場する竹製のうちわは、直径約40センチ、重さ300グラム、柄の部分もあわせれば、長さは70~80センチにもなる、かなり大きなものである。この巨大うちわ、稲などの穀粒を茎から取り離したあと、もみを空中に放り上げ、うちわであおいで得られる風によって実と籾殻や小枝の選別をする風撰(ふうせん)とよばれる作業に用いられる。単純な作業のように見えるが、原理は手動の唐箕や動力脱穀機による脱穀にも用いられている。うちわ両手に汗まみれになって、豊な実りを楽しむ風景も悪くない。

国立民族学博物館 野林厚志

毎日新聞夕刊(2005年8月17日)に掲載