国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

モノめずらしいくらし(7) ─ 携帯電話 ─

異文化を学ぶ

フィリピンで知り合いの若い女性から、電話番号を教えるから連絡してくれという伝言を受け取った。手紙に頼るしかなかった離村でも、開設が容易な携帯電話のおかげでやっと現代的な通信手段が使えるようになったらしい。

ところが何度かけても相手は出ず伝言をどうぞという録音が流れるだけ。近くの街で手紙を託し、ようやく会えた彼女が言うには。

「伝言は1週間に一度くらいしか聞かないから」。え、どういう意味?「電話機は高いから持ってないの」じゃこの番号は?「私のカード(電話機の頭脳部分でとりはずしができる)の番号。それだけ買って、電話機はみんなで回して使うんです。だから自分の番がきたら伝言を聞くことができる」

ふーん。携帯にふりまわされる日本での日常をちょっと反省。

国立民族学博物館 菊澤律子

毎日新聞夕刊(2005年9月14日)に掲載