国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

旅・いろいろ地球人

モノを見る目

(3)手を動かして目を鍛える  2009年4月15日刊行
上羽陽子(文化資源研究センター助教)

刺繍を楽しむインド西部の女性
女性たちと一緒に針を動かしながら刺繍(ししゅう)技術を習得する。調査地で現地の人と一緒に手を動かしながら聞き取りをする。このスタイルで、これまで私は調査をおこなってきた。

昨年、インド西部の刺繍技術の手順を再現する技術パネル作成をおこなった。目的は、インドの刺繍布をテーマにした国立民族学博物館の企画展にて、この地域の人びとが、いかに少ない布と糸を利用して、巧みに文様表現をしているか理解してもらうためであった。特に刺繍布は、同じような技法で表現されているように見えても、針運びがまったく異なっているものがある。そのような技法は、布の表面からどれだけ眺めていても、針の動きを理解することはできない。そのため、このパネルには表裏の両面から技法が見えるように工夫を施した。

実際に手を動かすと、それまで見過ごしていたモノの背景が見えてくることがある。それは、見る視点が鍛えられ、必ずといっていいほど、新しい発見があるからである。現在、民博で開かれている特別展の関連企画として「ひとり×みんな|ものづくりワークショップ」をおこなう。大人も子供も手を動かしながら、モ ノを見る目を鍛えていただければと思う。
シリーズの他のコラムを読む
(1)動詞で見る 小林繁樹
(2)根源美 八杉佳穂
(3)手を動かして目を鍛える 上羽陽子
(4)ラオスの蚊帳 白川千尋
(5)織物は招く 樫永真佐夫
(6)目利きの真偽 三島禎子
(7)手にとる 佐々木利和