国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

旅・いろいろ地球人

休暇とバカンス

(5)海外で金集め 『毎日新聞(夕刊)』掲載 2009年7月1日刊行
須藤健一(国立民族学博物館長)

ニュージーランドのカヴァを飲む会
南太平洋・トンガ王国の公務員は、3年ごとに6カ月間の休暇がもらえる。安い俸給で国王に忠誠を尽くす代わりのご褒美。公務員はこのときとばかりに、親族が住むニュージーランドやアメリカに旅をする。

男性はカヴァ(コショウの木根の粉末)、女性はタパ(樹皮布)やマットの土産持参でキョウダイの家に居候。カヴァを水に溶かして飲む会には多くの男性が集まる。歓迎のカヴァ会では訪問者に数百ドルのお金を恵んでくれる。女性には、教会のホールで伝統踊りの会を催してお金を集めてくれる。

移住者は、本国の親や親族への送金で生活が苦しくても訪問者を温かく迎える。訪問者は、トンガ人の親族や友人が住むアメリカの都市を巡れば、数カ月で1万 ドルは手に入る。そのほかに、お別れ会のパーティでも1カ所で1000ドルの餞別(せんべつ)がもらえる。その金で建材、中古の車、電化製品、家具、食器、衣服などを買いこんで、コンテナにつめてトンガに送る。

トンガの公務員は、家を新築して近代的な生活を実現するには給料ではなく、休暇利用の海外旅行が不可欠である。
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