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旅・いろいろ地球人

休暇とバカンス

(6)王様の休日 『毎日新聞(夕刊)』掲載 2009年7月8日刊行
西尾哲夫(研究戦略センター教授)

サマルカンド・レギスタン広場
友人があそびに来るとなると、そうじぐらいはしておくだろう。だが王様が来るとなるとたいへんなことになりそうだ。

ロシアとインドという2大国にはさまれた中央アジアの国ウズベキスタンでの話。

古都サマルカンドのホテルに入ると、全体の空気がひどく緊張している。フロントで尋ねると、訪問中のインド首相が予定を変更してサマルカンドを観光するらしい。ホテルは一般客の予約をキャンセルしたのだが、私たちへの連絡だけが漏れてしまったのだ。

名所めぐりをしたとき、ごみ一つ落ちていないことに気づいてさすがは世界遺産だと感心したのだが、理由はちがっていたようだ。私たちはホテルに1泊だけすると、明朝すぐに町を出ることにした。

だが、すでに道路封鎖がはじまっており、路地裏にまで車があふれている。20分ですむところが3時間もかかってしまった。

今は昔、インド王のシャフリヤールがサマルカンドの弟を訪ね、庶民をまきこんだ不思議な物語が延々と語られることになる。ご存知アラビアンナイトの冒頭である。時代は変わっても、王様の気まぐれにつきあわされる庶民の立場は変わらないようだ。
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