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涼を飲む

(3)フィンランドの自家製ビール 『毎日新聞(夕刊)』掲載 2009年8月19日刊行
庄司博史(民族社会研究部教授)

屋外で飲むカルヤは格別だ
かつてロシアを旅行した人は、街角にいたるところで売られていたクワスという飲み物を覚えているだろう。うっすらとビール味のする甘くて発泡性の飲み物で、夏、炎天下で飲むクワスは、たまらなく爽(さわ)やかだった。

じつはフィンランドでも、同じ飲み物がカルヤという名で今も飲まれいる。自家製ビールとはいえ、アルコール分は1%に満たず、もっぱら清涼飲料水として愛飲されてきた。酒類とはみなされていないため、子どもでも飲め、大学の学食でもミルクと並んで売られていた。

作り方はいたって簡単。ライ麦の麦芽にお湯を注ぎ、砂糖とイーストを加えて1晩発酵させるだけである。そのため、コーラなど清涼飲料の普及する以前はほとんどの家で作り置かれ、ジャーに入れ冷蔵庫で冷やされていた。甘すぎたり、発酵しすぎたりするのも手作りの楽しみであった。

それでも近年では、材料の調合や温度管理が面倒なためか、お湯にといて1日待てばいいカルヤ・パックや1リットル瓶で市販されるものも飲まれるようになった。確かにうまくはなったようだが、最初の一口の緊張感がなくなったのは残念な気もする。
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