国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

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人、アートと出会う

(2)触覚芸術鑑賞法「やゆよ」のススメ 『毎日新聞(夕刊)』掲載 2009年10月14日刊行
広瀬浩二郎(民族文化研究部准教授)

トキのバードカービング

「手を触れないでください」。多くの博物館では資料の保存という観点から、視覚による見学を大原則としている。繊細なアート作品は、触れることによる破損の恐れもある。しかし、そもそもミュージアムの展示物の大部分は人の手で作られている。彫刻の細工などは、さわって初めて納得できる手仕事の美といえよう。

資料の保存に配慮しつつ、触覚による鑑賞を楽しむ方法、さわるマナー「やゆよ」を提案したい。優しくさわる。作品への敬意を持って注意深く触察する。ゆっ くりさわる。一目瞭然(りょうぜん)の視覚と異なり、モノを触知する場合は時間がかかる。あせらず繰り返しさわることにより、手仕事の細部を理解することができる。洋々とさわる。あたかも水が満ち溢(あふ)れ広がっていくように、創造力と想像力を発揮して触学する。

現在、民博で開催中の企画展「点天展」では、さわるアートの可能性を確認・普及するために、木彫の鳥、継手(つぎて)縁台、石創画などの作品を展示している。手で作られた芸術を手で味わう。優しく、ゆっくり、洋々と。来館者の触覚の交流から新たな触れ合いが生まれることを願っている。

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