国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

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(3)返還された仮面に第二の人生 『毎日新聞(夕刊)』掲載 2010年6月16日刊行
中牧弘允(民族文化研究部教授)

仮面づくりのワークショップ=ジェイムズ・クリフォード撮影

文化人類学者のジェイムズ・クリフォードが今月下旬に初来日する。彼は1980年代から今日にいたるまで、諸民族の文化をめぐる概念や方法について鋭い批判を展開してきた。いわゆる「ポストモダン人類学」の論客としては、おそらくその右に出るものはいない。

ポストモダンとは字義的には近代以後を意味するが、脱近代とも訳され、植民地主義的な近代の超克をめざす概念である。とくに民族誌を書く行為には、植民地 主義的な状況下での植民者側の権威に連なる問題群があることを指摘する潮流を生んだ。民族資料の収集や展示にも同様な事情がかかわっている。

26日の民博での講演は「文化遺産の返還とその再生」と題され、フランスの地方博物館からアラスカ州コディアク島の博物館に戻された仮面がとりあげられ る。この博物館は先住民によって運営され、博物館の研究者と文化を継承しようとする人びとが組んで、貴重な仮面を活用したさまざまなプログラムを実践している。仮面づくりのワークショップはそのひとつだが、返還された文化遺産に待ち受けていた「第二の人生」とはどんなものか、汲(く)めども尽きぬ話題に心を躍らせている。

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(1)汲む器のさまざま 久保正敏
(2)ラクダのための水くみ 池谷和信
(3)返還された仮面に第二の人生 中牧弘允
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(5)意外性から普遍性へ 広瀬浩二郎
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