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旅・いろいろ地球人

お墓のはなし

(7)肝だめし 『毎日新聞(夕刊)』掲載 2010年9月15日刊行
近藤雅樹(民族文化研究部教授)

夏の夜友だちみんなで、きもだめし=松井譲二著『ふるさとのあそび』(厳潮社)より。イラストは近藤教授作成
今年も、とうにお盆を過ぎたが、猛暑はまだまだ残りそう。そこで一席、納涼話しを。

夜の墓場は、怖いゾォー!

中でも、村はずれの土葬墓が怖い。死人は火葬にして遺骨を累代墓に納めることが普通になっている今も、まだ所々に埋葬した墓は残っている。土饅頭(まんじゅう)の傍らに、文字はかすれ、倒れそうに建っている卒塔婆(そとば)を見るのは薄気味悪い。

そうした墓場は、里山の麓(ふもと)や海辺、川辺の近くにあって、村の共同墓地である。墓地の面積は広げずに何度も掘り返して使う。だから、穴を掘っていたら、以前に埋葬された人の骨が出てくることもよくあった。

このような墓場は「埋め墓」とか「捨て墓」などと呼ばれていた。一方で「詣(まい)り墓」というものが建立されていた。こちらは、寺堂の裏手に祀(まつ)られていた。盆や彼岸などの墓参りには、亡骸(なきがら)を埋葬した墓場にではなく、この「詣り墓」にお参りする。しかも、奇妙なことに「詣り墓」に遺骨は納められてはいない。

このような習俗が最も濃厚に見られたのは近畿地方で、東北・九州を除く周辺地域にも広がっていた。

見捨てられた墓場で遊ぶ肝だめしは、待っている方も怖かった。
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