ここ10年ほど、パプアニューギニアの津波被災地へ通っている。町から現地までは海上をボートで4時間。生存者たちは、津波の再来を恐れ、住み慣れた沿岸から内陸へと集落を移転したため、目的地まではさらに1時間かかる。住民にとっては畑に近くなったが、漁場へは少し不便になってしまった。
かつての海岸集落と新天地との間には、汽水湖が横たわっている。その内陸側にはマングローブの森が広がり、ところどころの切れ目が、内陸の新しい集落へ続く河口となっている。
内陸の集落から湖へ、さらには海へ出るには、川をカヌーやボートで下るしかない。しかし、川は水だけでなく、上流から土砂をも運び、河口付近に堆積(たいせき)させる。通行に支障が出始めると、スコップなどを使って手作業で水中の土砂をさらい、通路を確保する。それでも干潮時には船から下りて皆で押したり、潮が満ちるのを気長に待つこともしだいに増えてきた。
腕時計を見ながら心配する私に、友人は言う。「先のことなど心配するな。湖の水の流れが変わり、いつの間にか土砂がどこかに運ばれてしまうこともある」。確かに魚を追い込む浅瀬は、毎年少しずつ移動している。
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