国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

旅・いろいろ地球人

オセアニア探検

(3)熱帯で教会衣装をまとう  2011年7月28日刊行
丹羽典生(研究戦略センター助教)

南太平洋の教会衣装
キリスト教の宣教師が南太平洋に足を踏み入れたとき、島によっては人食いの慣行などがあった。島に住み込み福音を伝道する仕事は、彼らにとっては野蛮な地への冒険とさえいえた。

彼ら宣教師の伝道の結果、太平洋の国々では、宗派の違いはあるにせよ、キリスト教は熱心に信奉されている。

宣教師が来た当時、太平洋の人々は男女ともに、上半身裸であることは珍しくなかった。そのため、信者となった者は、熱帯の気候には不釣り合いな衣服をまとうことで、キリスト教への入信を視覚的に表現したとさえいえた。

現在、私が調査しているフィジーの村々では、いまでもキリスト教を祖先がいかに受け入れたのかについて、さまざまな伝承が残されている。興味深いことに、そうした物語のなかには、宗教的衣装が村にもたらされた由来が語られることがままある。

民博のオセアニア展示場には、南太平洋の人々が現在着用している教会衣装について紹介するコーナーがあらたに設けられた。トンガ、ハワイ、クック諸島の教会衣装の共通性と違いを通して、南太平洋の地において、キリスト教がいかに受容されたのか、その一側面をみることができる。
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(2)欧州から豪州への道 久保正敏
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