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美味望郷

(6)確かに、蟻も悪くない 『毎日新聞(夕刊)』掲載 2012年10月11日刊行
関本照夫(国立民族学博物館特任教授)

ジャワの農村では、蟻だけではなく、こんな店で食べるかき氷もおいしい=筆者撮影

日本人は今ではあまり虫を食べないが、以前は日本でも世界でもいろいろな虫を食べてきたようだ。私も蜂の子煮は食べたことがある。

ウィキペディアで「昆虫食」の項をざっと見ても、蚕の蛹(さなぎ)、イナゴその他たくさんの虫が盛んに食べられていたと分かる。傑作なのは、アカヤマアリを揚げて塩をかけチョコでくるんだチョコアンリなるものが、1950年代の日本で製造されアメリカに輸出されていたという記事である。

蟻(あり)は虫の中で特においしいという。アフリカのチンパンジーが蟻塚に小枝を突っ込み、付いてくる蟻を好んで食べる話はよく聞く。私が70年代後半に何回か長期滞在したインドネシア・中部ジャワ州の農村でも、茶色で大型の羽蟻が珍味だった。

この羽蟻はいつも手に入るものではない。年に一度くらい、地面から大量の羽蟻がわき出し、村中を飛び回る。みんな夢中でこれを捕まえ、羽をもぎ、中華鍋で炒(い)って砂糖をまぶし、スナック代わりに食べる。最初は気持ち悪く思った私も、もらって食べてみたら悪くなかった。パリっとしてかりん糖のような食感がする。忘れられない美味というほどではないが、蟻は確かに味が良い。蟻さんも見栄えの悪さで損を、あるいは得をしているようだ。

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