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贈り物

(2)あの世へ何もかも 『毎日新聞(夕刊)』掲載 2013年1月17日刊行
陳天璽(国立民族学博物館准教授)

冥界用の通貨、薬、マージャンなど=筆者撮影

中国や台湾をはじめ世界各地に暮らす華人たちの間で大切に守られている贈り物文化の一つに、あの世で暮らす先祖たちに送る供養品がある。

旧暦二十四節句の一つである清明節(せいめいせつ)(新暦4月4~6日ごろ)は、家族総出で墓参りをする。中国系社会の暦では祝祭日と指定され、学校や会社も休日となるほど、祖先祭祀(さいし)は重視されている。

清明節のほか春節、中元や冬至などになると、家に祖先を招き儀礼を行う。食卓に6人分ほどの席を作り、各席に皿や茶碗(ちゃわん)、箸、酒の入った杯などを並べる。中央には三牲(さんせい)(豚バラ、鳥、魚)や三素(野菜三品)、そしてたくさんの果物と祖先が生前好きだった物を供える。子孫たちは代わる代わる食卓に向かって線香をあげ祈りをささげる。

祖先たちの食事が済んだであろう頃、子孫たちは一つ一つ元宝(げんほう)(古代の金・銀貨)の形に折った金や銀箔(きんぱく)の紙銭(しせん)を燃やす。冥界の住所と宛名を明記し、祖先たちがあの世で不自由のないようにと送金するのだ。

通貨のほか、冥界用クレジットカード、パスポート、携帯電話、下着などなんでもある。新仏には、家具が揃った冥宅(めいたく)(家)を送る。すべて紙製で、燃やすことであの世に届く。生者に仕えるかのごとく、死者にも仕えるのが中国流であり、贈り物もしかりだ。

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