国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

旅・いろいろ地球人

冬を楽しむ

(5)カワカマスの穴釣り  2014年1月16日刊行
佐々木史郎(国立民族学博物館教授)

氷点下30度の川の上で穴釣りに興じる人=ロシア極東・コンドン村の前で2012年12月、筆者撮影

ロシアでは、冬の楽しみの一つに穴釣りがある。全面結氷した川の上は風が吹いて結構寒いのだが、それでも人々は氷の上で穴釣りに興じる。

私がしばしば調査のために訪れている極東ロシア・アムール川の支流、ゴリン川の流域にコンドンという村があり、そこにナーナイという先住民族が暮らしている。彼らにとっても結氷した川の上での穴釣りは冬の楽しみだ。ここで取れるのは、カワカマスだ。体長50センチ内外の比較的大きな魚で、スープやフライにするとおいしい。

カワカマスの穴釣りのシーズンは12月。川は結氷しているが、氷の厚さはまだ数十センチで、穴をあけるのにそれほどの労力はいらない。魚がひそんでいそうな所に直径30センチほどの穴をあけ、そこに針がついた疑似餌を垂らす。

疑似餌はプラスチック製で、小魚の形に作られており、その周囲に6本の針と重りをつける。疑似餌は水中で上下させると、いかにも小魚が泳いでいるような動きをみせる。そこに悪食のカワカマスが食いつくという仕掛けだ。

私もやってみたが1時間たってもどうにも釣れない。でもうまい人は同じ時間で5、6匹は釣り上げる。大物がかかったときの満面の笑みは万国共通である。

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