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(3)多数派はどっち? 『毎日新聞(夕刊)』掲載 2014年4月24日刊行
庄司博史(国立民族学博物館教授)

通りを行き交う「外国人」ら=スウェーデン・ストックホルムで2011年9月、筆者撮影

スウェーデンの首都ストックホルム。中心部から地下鉄で約30分のその一角は、人口の9割以上が外国人だ。この市でも突出した地域である。始発駅から多数派とは外見の異なるアフリカ、中東系の人々が目立つが、その駅に近づくにつれ外国人の密度は増していく。プラットホームに降りると、北欧系の人々はもはやほとんどみられない。

駅広場に隣接するスーパーなどでも客はほとんどが外国人。レストランやカフェはエスニックな料理や飲み物のメニューが掲げられ、アラビア語、エチオピア語などのポスターも目に入ってくる。顔つきも服装も多様な人々が行き交うにぎやかな町だ。

ここに、40年も前から安い公営住宅や気の休まる仲間を求めて外国人が集まり始めた。多数派の視線を気にする必要がないのも魅力だ。ただし、外国人の集住は元々の住民が彼らを好まず、流出した結果でもある。市は低所得者の集住やゲットー化を防ぐため、学校教育に力を入れ、職業研修制度を強化して多数派との格差是正につとめている。

しかし、高い失業率や外国人の低階層化で、多数派と外国人双方の不満、不安は尽きない。外国人という言葉が意味をなさないほど彼ら抜きではやっていけないここでは、日本で流行(はや)る多文化共生のスローガンは少しうつろに聞こえてしまう。

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