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(6)先祖とつながる日 『毎日新聞(夕刊)』掲載 2014年5月15日刊行
呉屋淳子(国立民族学博物館機関研究員)

墓の前に並んだたくさんのごちそう=沖縄市で2011年4月、筆者撮影

墓参りは、沖縄の年中行事で最も重要なもののひとつ。八重山・宮古諸島では旧暦1月16日の十六日祭(ジュウルクニチー)、沖縄本島では旧暦3月の清明祭(シーミー)がそれにあたる。

墓参りの日は、「先祖とつながる日」だ。この時には親戚一同が墓の前に集い、先祖供養と近況報告をする。供養を無事終えると、男性たちは墓の前に大きな敷物を広げて宴(うたげ)の準備を始める。女性たちは、それぞれが持ち寄った重箱料理を並べ、紙皿と割り箸と紙コップのセットを慣れた手つきで配りだす。みんなで料理をつつきながら、泡盛やオリオンビールで乾杯するのが定番である。

この日のために、都会から帰郷する若者の姿も少なくない。久しぶりに地元に戻り、墓の前で家族や親族と一日を語り過ごす。彼らにとって大切な先祖供養の日というだけでなく、親族との交流を深める機会でもあるわけだ。

数年前、八重山諸島の墓参りと県立高校の卒業式の日が重なった。まさに地域の大問題。そこで、八重山諸島で唯一県立高校のある石垣島では、島内3校長が集まり、卒業式の日程を調整した。おかげで、その年の卒業式は延期され、親戚一同揃(そろ)って「先祖とつながる日」を迎えられた。沖縄の年中行事は、校長らのこうした判断によっても支えられている。

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