国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

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生き物

(4)カカオ畑のハチミツ 『毎日新聞(夕刊)』掲載 2014年6月26日刊行
浜田明範(国立民族学博物館機関研究員)

収穫したアフリカミツバチの巣=ガーナ・ブランカシで2012年1月、筆者撮影

草木の多いガーナ南部のカカオ農村地帯では一年を通してハチミツを採ることができる。夕日が沈むのを見計らい、私たちはカカオ畑へと出発した。

アフリカミツバチを誘い込む巣箱を作った大工がリーダーだ。巣箱を置いている畑の主と作業を手伝う大工の弟、それに私の4人での行軍になった。暗闇の中、森の小道を懐中電灯を頼りに80分ほど歩く。

熱帯の強い日差しによる暑さからミツバチを守るため、巣箱にはアブラヤシの葉が被(かぶ)せられていた。それを取り除くと、2センチ幅の木片の蓋(ふた)が並べられたシンプルな巣箱が姿を現す。大工が鉈(なた)で巣箱の腹を叩(たた)く。反応がない。蓋を開けてみると、乾いた巣の残骸だけが残されていた。1週間前にいたという野生のミツバチはどこかに移動してしまったらしい。

幸いなことに、近くに設置していたもうひとつの巣箱には、まだミツバチがすみ着いていた。煙でいぶしながらひとつずつ蓋を取り外し、ハチミツの詰まった巣をナイフで切り取る。巣はタライに移し、町まで持ち帰る。

ミツバチから逃げるように帰り道を急いでいると、首筋に痛みを感じた。どうやら、私だけが刺されたらしい。それでも、ミツバチから奪ったカカオ畑のハチミツは最高のご馳走(ちそう)だ。

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