国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

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生き物

(6)いつかは行きたいイノシシ猟  2014年7月10日刊行
丹羽典生(国立民族学博物館准教授)

フィジーの村にある豚小屋=2010年10月、筆者撮影

フィジーの生活で日々口にする肉といえば圧倒的に鶏肉(近年ではことに輸入物)が多いが、お祭りの際のごちそうとなると、牛肉や豚肉ということになる。

牛肉が普及したのは比較的近年のことである。一方で豚はヨーロッパ人の到来以前から、冠婚葬祭には欠かせない動物であった。そうした儀式の機会を見越して、飼育する人もいるほどである。

飼育だけではなく、野生の豚つまりイノシシを狩りで捕まえることもある。狩りでは、犬と行動を共にすることに特色がある。罠(わな)に生け捕りにされたイノシシを見つけると、犬は鳴き声を上げるようにしつけられている。鳴き声は普段の声と違う種類のもので、慣れた猟師であれば、すぐに聞き分けることができるという。

鳴き声を耳にした猟師は、捕獲の道具を片手に罠の設置された場所まで馳(は)せ参じる。捕まえられたイノシシは、食料としてすぐに解体されることもあれば、転売の機会を待つ場合もある。

ある山の中の村で半ば放し飼いにされたイノシシを見たことがあるが、多くは、そうした罠猟で捕まえたものであった。何度か猟への参加の機会を逃しており、いつか一度は直(じか)にこの目で見たいと思っている。

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