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(3)歴史とつながる給食 『毎日新聞(夕刊)』掲載 2014年8月14日刊行
加賀谷真梨(国立民族学博物館機関研究員)

波照間小中学校のある日の給食=沖縄・波照間島で2012年11月、筆者撮影

今、学校給食が熱い。「全国学校給食甲子園」も始まり、多くの学校栄養士が地場産物を用いた献立の作成に工夫を凝らしている。日本最南端の波照間小中学校でも「もちきび黄金ごはん」と「しいら(魚)とたっぷり島野菜のシークァーサー(かんきつ類)煮」、「パパイヤしりしり(千切りの炒め物)」に「アーサー(海草)汁」、デザートの「波照間黒糖ゼリー」に牛乳というメニューで2年前、入選を果たした。

際立つのは献立内容だけではない。残飯が出ないよう計算し尽くされた分量と、食べ終わるまでランチルームを出られないという不文律も特徴的だ。当初私は、必死の形相で皿の上の食べ物と格闘する児童・生徒の姿に驚いた。しかし、県外の学校で悪びれもせず残飯が山と積まれ、強制的に食事を中断して掃除へ移る場面に何度か遭遇するうち、波照間の給食時間は今や全国的に稀(まれ)かもしれないという思いに至った。

同島は、終戦直後にひどい食糧難を経験し、栄養失調も相まって島民の3分の1がマラリアで亡くなった。ソテツを濾(こ)したでんぷん質を食べて生き延びた苦労話は、今でも子どもたちに伝えられている。皿が空になるまでの一口一口は、飢えに苦しんだ祖先の分だとも言えよう。自分のいのと祖先との繋(つな)がりを気づかせる仕組みも、学校給食に求められているのだと思う。

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