国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

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(7)手話で広がる世界 『毎日新聞(夕刊)』掲載 2014年11月6日刊行
相良啓子(国立民族学博物館プロジェクト研究員)

iSLanDSのメンバー=イギリス・ランカシャー州で2013年9月、筆者撮影

手話やろう者学を対象とした最先端の研究をしている国際的な組織iSLanDS (国際手話言語学・ろう文化学研究所) が、イギリスのセントラル・ランカシャー大学にある。研究範囲は、インド、ヨルダン、ウガンダ、インドネシア、日本などへと広がり、働く職員もドイツ、インド、オランダ、アメリカと、国際色豊かなユニークな研究機関だ。

私はそこに4年間所属し、研究組織のスケールの大きさに圧倒されながら、手話言語の研究アシスタントとしてさまざまなことを学んだ。聴者もろう者もみな自国の手話以外の手話を使いこなせるマルチリンガルの人材だ。発足してせいぜい約10年というまだ新しい組織だが、ろう者が主体になって手話言語の研究大会をイギリス、オランダ、インド等で開催してきた。

iSLanDSが特に力を入れていることのひとつに、途上国のろう社会に対する教育・研究支援がある。現在の取り組みには、イギリスをハブとしてインド、ヨルダン、インドネシアのろう社会とのパイプを作り、それぞれへの教育・研究支援をするというものもある。一人の力でできることはわずかでも、手をつなぎ、組織的なシステムを構築することで可能性が数倍に広がるよい例だと思う。

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