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驚く

(2)君は何曜日生まれ? 『毎日新聞(夕刊)』掲載 2015年3月26日刊行
吉田ゆか子(国立民族学博物館機関研究員)

インドネシア・バリ島の誕生日オトンの儀礼の様子=2013年12月、筆者撮影

1990年代初期、初めて訪れたインドネシア・バリ島で、ホテルの従業員に何気なく年齢を尋ねると、なにやら計算を始めた。「えっと、今年は何年だ?そうそう、確か生まれが70年だから…」。若い人が年齢を即答できないという事態が、私には驚きであった。南の島の人はのんびり屋だなあ、などと思ったものだ。

しかし、調査でバリに長期滞在するようになると、彼らが実は我々以上に頻繁に誕生日祝い(儀礼)をしている事を知った。「オトン」と呼ばれるこのバリ式の誕生日は、「ウク暦」という独特の暦に基づき210日周期で巡ってくる。ウク暦では、7日からなる週が30週間で1年を構成している。ウク暦のどの週の何曜日がオトンなのかは、その人の性格や運命を占ううえで重要とされる一方、何回目のオトンなのかは3回目を過ぎればほとんど気にされなくなる。今でこそ、子供の西暦上の誕生日を祝う家庭もあるが、かつては誕生日と言えばオトンだった。そのため、(西暦上の)生年月日や年齢はそれほど意識されなかったのだ。

なお、210は7の倍数なので、ウク暦の誕生日(オトン)は毎年同じ曜日となる。バリの友人に、「君は何曜日生まれ?」と聞かれた。答えられない私に、今度は彼らが驚く番だった。日本人は呑気(のんき)だなあ、とでも思っただろうか。

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