国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

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肉食紀行

(4)クリスマスの正餐  2015年12月24日刊行
野林厚志(国立民族学博物館教授)

鶏にない風格が七面鳥にあるのか=オックスフォードで2000年、筆者撮影

今日はクリスマス・イブ。ローストチキンが食卓にならぶ光景は日本でも珍しくないだろう。しかしながら、クリスマスの正餐(せいさん)は本来25日にいただくということはよく耳にする。例えば、イギリスではこの日に詰め物をしたロースト七面鳥を食べるのが「由緒正しい」クリスマスの過ごし方という。一方、アメリカではローストした七面鳥は11月下旬の感謝祭でいただく。大西洋をはさみ、異なる機会に同じような食べ方で七面鳥を消費するようになった経緯は実はよくわかっていない。

イギリスにはもともと七面鳥は生息しておらず、16世紀以降に新大陸から移入されたというのが通説である。それまで食べられていたガチョウやアヒルに比べて、脂肪分が少なく、一回り大きい七面鳥は、クリスマスに大人数で食べるのには好都合だったのかもしれない。

イギリスにいた頃、ロースト七面鳥に挑戦した。1、2ヶ月前に肉屋に予約をして、22日くらいから24日の間に鳥を取りに行く。引き取りの当日には肉屋の前には長い行列ができるが、並んで待つのもクリスマスの一つの楽しみだとか。

越したばかりの時には怪訝(けげん)に感じた台所のやたら大きなオーブンもこの日のためにと思えば納得なのであった。

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