国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

旅・いろいろ地球人

文化財を守る

(3)地域が主体の継承の形 『毎日新聞(夕刊)』掲載 2016年4月21日刊行

日高真吾(国立民族学博物館准教授)


新化で出会った米穀店の店主(中央)。ご自身の人生について話を聞かせてくれた=2015年10月、河村友佳子さん撮影

被災してレスキューされた文化財をどのように地域で活用し、次の世代に継承していけばよいのか。このテーマについて筆者は思案している。これは、次の世代に地域の文化財を継承するためには、地域が主体となることに意義を見出(みいだ)す必要がある、との考えに依拠しているものであり、災害に限らず地域文化そのものの保存の意義を考える上での課題でもある。

実践事例として、地域住民が主体となり、町並みや歴史を活(い)かしながらその土地の地域文化を継承している活動に注目している。そのなかで、台湾の新化(しんか)という町の活動を調査する機会を得た。

新化は、製糖産業の拠点として発展した町で、古い町並みをよく残している。現在、歴史的建造物の修復や歴史ある商店、寺院を活用した町じゅう博物館ともいえる活動を進めながら、町の活性化が図られている。

創業から100年以上の歴史をもち、観光客の見学も受け入れている米穀店の店主への取材からは、ご自身が育った町への愛着、そこで出会った人々とのつながりなど、人生の歴史に誇りを持っていることを感じた。住民自身それぞれがもっている地域での思い出こそが、地域文化を継承するキーワードとなるのかもしれない。

シリーズの他のコラムを読む
(1)災害時にすべきこと
(2)海外若手研究者に学ぶ
(3)地域が主体の継承の形
(4)保存修復の現場から