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文化財を守る

(4)保存修復の現場から 『毎日新聞(夕刊)』掲載 2016年4月28日刊行

日高真吾(国立民族学博物館准教授)


文化財の保存修復の様子。技術習得にはたくさんの人との交流が欠かせない=2012年7月、橋本沙知さん撮影

奈良の元興寺文化財研究所は、筆者が大学を卒業して、文化財の保存修復技術を学んだ研究所である。当時は、民俗文化財の保存修復部門に所属しており、たくさんの人たちから、保存修復技術の習得はもちろんのこと、修復材料の化学的な知識や文化財の状態を診断するための分析技術を教わった。これらの人たちとの交流は、筆者が研究活動を進めるうえで、大きな財産となっている。

日本の文化財の保存修復技術は、世界的にも水準が高く、例えば、和紙を用いた技術は、さまざまな文化財の修復に応用できることから、世界中の修復家がその技術を日本で修業し、身につけている。

一方で、文化財の保存修復の理念やその理念に基づいた修復技術は、欧米に学ぶところが大きく、たくさんの日本人留学生が海外で学んでいる。

このような文化財を通した人的交流は、世界各地の文化財の保存に貢献し、そこで修復された文化財が展示されることで、世界中の人が観覧でき、実に豊かな人と人との結びつきを生み出している。

しかし、世界各地の紛争は、かけがえのない文化財を危機に追い込んでいる。この問題にどのように取り組めばよいのか。今、まさに私たちみんなで考えることが求められている。

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