国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

旅・いろいろ地球人

フェアトレードタウン

(4)熊本、そして名古屋  2016年6月30日刊行
鈴木紀(国立民族学博物館准教授)

熊本への支援を呼びかける名古屋のフェアトレード・イベント会場=5月、筆者撮影

公正な貿易を町ぐるみで推進しようとするフェアトレードタウンは日本にも誕生している。2011年6月に熊本市が、15年9月には名古屋市が名を連ねた。

フェアトレードタウンとなるための国際基準に加え、日本では、地域活性化への貢献という基準が設けられた。これにより地産地消や地域の活動との連携が奨励されている。もはや貿易の公正さだけでなく、地域の暮らし全般をフェアにすることが日本版フェアトレードタウンの目標である。

先月には名古屋市でフェアトレードタウンの誕生を祝い、「地球とのフェアトレード」をテーマに各種催しが実施された。世界のフェアトレード・コーヒーを試飲するイベントには、多数の参加者があった。そこでは同時に、4月の地震で被災した熊本への支援が盛んに呼びかけられていた。フェアトレードタウン間が相互に助け合うことは、この制度の重要な役割だろう。

フェアトレードタウンになるより、それを維持する方が難しいともいわれる。震災復興を目指す熊本と、それを応援する名古屋で、「公正な暮らし」という価値観が浸透することを願う。また両市に倣い、国内の多くの町がフェアトレードタウンを目指すことを期待したい。

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