国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

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デジタルで見る衣食住

(2)変わりゆく食文化  2016年9月15日刊行
丸川雄三(国立民族学博物館准教授)

ひょうたんから作られた韓国のひしゃく(パガヂ)。ひび割れを接いだ跡が見える=「韓国の食文化データベース」より

 国立民族学博物館(民博)には、貯蔵器などの食に関する資料が数多く収蔵されている。

 食は毎日の活力の源であるとともに、人々が自然と人との関わりの中で育んだ文化である。民博の資料は、その地域を支え続けてきた伝統的な食文化の一端を私たちに伝えてくれる。

 世界的な潮流である生活様式の近代化は、食の景色にも大きな影響を与えてきた。日本における冷蔵庫の世帯普及率は、1960年には1割程度であったものが、わずか10年後には9割を超えるまでになる。高度経済成長期における台所の変化がいかに急激であったかを物語るものだろう。

 他の国ではどうだろうか。昨年、民博の企画展「韓日食博」において館内公開された「韓国の食文化データベース」には、88年以前に収集された韓国の食器や調理器が収録されている。当時よく見られた水汲(く)み用のひしゃく(パガヂ)などは、やはり現在の家庭ではほとんど見ることができないそうである。

 民博ではこのような資料の情報を、日本語だけではなくその地域の言語でも発信する「フォーラム型情報ミュージアム」という取り組みを進めている。

 失われつつある世界各地の貴重な資料を整理し、デジタル技術によりそれぞれの地域に届けることが、今、博物館には求められている。

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