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大阪の見えざる力

(4)二十歳となるNPOセンター  2016年10月27日刊行
出口正之(国立民族学博物館教授)

大阪NPOセンターの賞を受賞したNPO法人スマイルスタイルの「ハローライフ」=大阪市西区で10月、筆者撮影

 サード・セクターは非営利セクターとも呼ばれ、NPO(非営利組織)は、その一つである。1995年の阪神淡路大震災が直接の契機となり、特定非営利活動促進(いわゆるNPO法)が誕生し、その法律に基づくNPO法人は身近な存在となった。

 大阪NPOセンター(大阪市中央区)は全国各地の「NPOセンター」という名称の民間組織の先輩格に当たる。NPOを支援、育成する組織だ。今ではそれほど珍しくはないが、当初より「公開審査会」という手法を用いて、賞金を提供してきた。候補となるNPOのプレゼンテーション能力を高めようと企図したのである。

 「ハローライフ」を運営するNPO法人スマイルスタイルは、その受賞先の一つ。仕事だけの情報を提供する「ハローワーク」ではなく人生という側面に焦点を当て、幸せを目的とした多面的な情報を提供する。

 大阪NPOセンターは、各地のNPOセンターとは異なり、大阪青年会議所が母体となって誕生したことから、弁護士や公認会計士が積極的に運営に関与した。他のNPOへ提供するのは資金だけではなくノウハウも。大阪のNPOに力がついたのは、そうした地道な活動ゆえであろう。11月で20周年を迎えるこのセンターにも大阪らしい知られざる力が秘められている。

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