国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

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フィールドワーク

(2)調査への身支度 『毎日新聞(夕刊)』掲載 2016年11月17日刊行

横山廣子(国立民族学博物館教授)


指南役(左)によってミャンマー風に身支度をした筆者。日焼けしていない足は隠せない=ヤンゴンで1997年(筆者提供)

マレーシアでは農村調査に入る前、大学の方にその恰好(かっこう)ではダメと言われた。市場の布地屋まで連れて行かれ、サロンという腰巻(こしまき)状の衣装用のを2枚買うことになった。布地屋の横にミシンが置いてあり、すぐに端を縫い合わせて筒状にしてくれた。上衣は日本から持ってきたTシャツでもよいとのこと。それで農村調査の身支度が整った。

この身支度、村に溶け込みやすいという理由からであったが、農村生活の必需品でもあった。簡単な囲いの中での水浴では、サロンを胸まで上げて水を浴び、新しいサロンを上からかぶりながら、さっと着替えをする。

私の主たる調査地である中国では、農村に入るときも服装について注意されたことはない。中国では、むしろ外国人とすぐわかる服装の方がよいのかもしれない。

しかし1990年代に初めて行ったミャンマーは違った。首都のホテルに着いた途端、同行した現地経験の長い日本人研究者は、ズボンからロンジー(腰巻状衣装のミャンマー語名称)にはき替え、私にも身支度を勧めた。現地風ブラウス、ロンジー、女性用の定番であった白いサンダルを買い揃(そろ)えることになった。当時、中国系男性にはズボンの人もいたが、男女ともに圧倒的にロンジーだった。最近のヤンゴンでも7割方はロンジーだという。

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