国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

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文化遺産のいま

(2)発掘の記憶 『毎日新聞(夕刊)』掲載 2016年12月15日刊行

関雄二(国立民族学博物館教授)


遺跡で発見された墓の女性被葬者とその従者にふんした子どもたち=ペルー北部・パコパンパ村で2015年8月、筆者撮影

文化遺産というと、研究者が見つけた価値あるものを国やユネスコが守っていくというイメージが強いが、例外もある。

南米ペルー北部、海抜2500メートルの高地に位置するパコパンパ遺跡は、私たちがここ10年以上にわたって発掘を続けている大神殿である。年代は前1200年~前500年ごろにあたる。

遺跡のふもとには、発掘期間中に私たちが暮らすのどかな村がある。金製品を副葬した立派な墓が発見されたこともあり、近年では観光客が訪れるようになった。

小村とはいえ、8月30日の村祭り前後には人口が数倍に膨らみ、サッカーや踊りが繰り広げられる。

昨年からは祭りのプログラムに仮装行列が加わった。参加するのは地元の小中学校の生徒である。カソリック信仰の篤(あつ)い村らしく、聖人の仮装が多い。

これに加えて歴史のテーマも披露される。採集狩猟民から始まり、私たちが見つけた墓の被葬者も登場する。そして何より驚いたのは、私や私の指導している学生らが登場する点だ。

いつのまにか私たちの発見と存在は、村人の記憶の中にとどまり、彼らの歴史の一部になろうとしている。

国やユネスコではない、この自然発生的な文化遺産への希求をなんとか文化遺産保護に結びつけたいと考えている。

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