国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

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世界のビーズ

(2)多種多様なストーリー 『毎日新聞(夕刊)』掲載 2017年4月13日刊行

池谷和信(国立民族学博物館准教授)


展示中のコルセット

ビーズには、一つ一つにストーリーがある。いっけん奇妙にみえるサルの歯からなる首飾りにも、ガラスビーズのコルセットにも、それぞれの意味がある。国立民族学博物館で開催中の特別展示「ビーズ―つなぐ・かざる・みせる」では、1300点のビーズ製品が展示され、1300の多様なストーリーがある。

たとえば、ビーズのコルセット=写真。これは、南スーダンのディンカの男性が身に着けるものだ。彼らは、牛を飼育することをなりわいの中心としている。ガラスビーズは牛を販売して得たお金で購入したものである。これを誰がつくるのかはわからないが、コルセットを身に着けていることは富の象徴を意味する。

100本以上のサルの犬歯がつながれたアマゾンの首飾りがある。この場合、1頭のサルには4本の犬歯しかないから、この首飾りに複数のサルが使われたことがうかがえる。この場合は、社会的な力を意味する。これが、人の歯になれば、首狩りの時代には敵の歯をつなげたというので、強いものの象徴になるのだ。

このように、素材は異なるが、いずれも素材が稀少であることで意味が生まれている。とはいえ、ビーズの基本は、人々の美意識を反映していることだ。縄文時代には翡翠、古墳時代にはメノウ、現在はガラスや真珠など、人々の美を追求する心は変わらない。

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