国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

旅・いろいろ地球人

カザフスタン点描

(1)万博をひかえた首都  2017年5月11日刊行
藤本透子(国立民族学博物館准教授)

にぎやかに春分の祭りが祝われていた。向こうにモスクが見える=アスタナで2017年、筆者撮影

カザフスタンの首都アスタナは、故黒川紀章が都市設計したことで知られる。1997年に旧首都アルマトゥから移転して、今年でちょうど20年目を迎える。

広大な草原を流れるイシム川沿いに建設されたアスタナは、かつて街の中心だった右岸と、首都になってから開発された左岸に大きく分かれる。左岸には大統領府があり、街のシンボルであるバイテレクタワーがそびえる。バイテレクは「生命の樹」を意味し、その上部では巨大な金色の卵が日の光にきらめく。円錐形を斜めにしたような独特のデザインの商業センター、中央アジアで最大規模のモスクなど、辺りには新たに建設された華やかな建物が多い。

今年6月~9月には、アスタナで万国博覧会が開かれる予定で、会場の整備が急ピッチで進められている。万博のテーマは、「未来のエネルギー」である。

15年前に初めて訪れたときに比べ、急成長を遂げた街は、少しよそよそしい感じもする。暮らしの匂いが恋しくなって右岸へ行くと、旧ソ連時代からの古いアパートが建ち並び、春先のぬかるみを行きかう人々の姿があった。

首都は物価高で、貧富の差がなかなか縮まらないと聞く。独立から25年を経て、カザフスタンはどこへ向かうのか、人びとの日常生活を通して考えてみたい。

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