国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

旅・いろいろ地球人

異形・異相の訪問者

(2)子供の大敵「大ガラッパ」  2017年6月15日刊行
笹原亮二(国立民族学博物館教授)

幼児を抱きかかえる大ガラッパ=鹿児島県南さつま市で2005年、筆者撮影

日本列島各地には、異形・異相の訪問者が現れる祭りや年中行事が伝わっている。鹿児島県南さつま市金峰町の水神祭では、ぼろの着物に縄の帯を締め、シュロの袋を被った「大ガラッパ」の一群が、鉦を連打するけたたましい音とともに奇声を発して集落内を巡り歩く。

ここでも子供たちは受難である。大ガラッパは、出会った子供たちを奇声で怖がらせるだけでなく、抱き上げてどこかに抱えていったり、ムシロで作った袋に閉じ込めたりする。子供たちは怖がって悲鳴をあげ、泣きじゃくって大騒ぎである。いやがる子供をあえて大ガラッパに託し、大ガラッパからの解放と引き換えに、いうことを聞くように約束させるという、大ガラッパとグルで「教育」を試みる親も少なくない。とはいえ、こうした教育が通用するのは学齢前ぐらいまでで、小学生になると、大ガラッパに付いて回り、いたずらをしたり生意気な口をきいたりして、怖がるそぶりは見られなくなるという。

怖い思いをさせられる子供はたまったものではなく、精神の発育に悪影響を及ぼしかねないといった声も聞こえてきそうである。しかし、この地域では昔からこうしたことが続けられてきたことを考えると、大ガラッパの教育も案外侮れないのかも知れない。

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